配信技研NEWS:視聴時間とは

弊社:配信技研(以下弊研)は日頃から視聴時間を軸としたデータを公開しています。これはライブ配信をする者:ストリーマーが自己実現した指標として、「視聴時間」が最も正確に表していると考えているからです。
 データに関するものは一般にストリーマーご本人よりも外部の方、特に関連企業の方がご覧になるでしょう。本文は、ストリーマー自身の方針とは別に、これをチャンスに活かしたい企業・事務所の方々向けの内容です。

■ ゲーム実況とは

弊研は「ゲーム実況」を手掛ける世界中の「ライブ配信」を視野に入れ、特に国内情報に集中して発信を行っています。

その「ゲーム実況」ですが、これはあらゆるゲームをプレイしながらプレイヤー自身の経験を視聴者と共有するものと捉えています。

ライブ配信とは「インターネット上で行う生放送」のことです。映像コンテンツの中でも、今起きていることを流して視聴者と会話・対話を行うものを指します。
 中にはイベント・大会が生中継されるものもありますが、発信されている多くのライブ配信は、ゲーマー個人がプレイしながら視聴者と対話する形式となっています。ライブ配信を行う個人のことを、英語圏に合わせて「ストリーマー」(streamer) と呼んでいます。

ゲーム実況のライブ配信では、ストリーマーは自分の本当に好きなことを行い、視聴者・ファン・コミュニティがそれを楽しみ、更にゲームタイトルにも利益をもたらすことが目的です。

世界では現在毎月1000万人以上がライブ配信を行い、視聴者がそれに毎月1200億分滞在しています。今も世界に30万人以上フルタイムのストリーマーが居ると言われています(出典)。(※中国本土など日本と共通のサービスを持たない国を除く)

(ストリーマーの例 画像出典

■ ライブ配信の魅力とは

ライブ配信の特長は、今そこで視聴者が見ていることです。

同じ「映像」という括りになりますが、テレビは勿論、動画・SVOD・ショートムービーサービスとは根本的にコンテンツの在り方が異なります。
 視聴者が既成の映像を次々と渡って行く動画コンテンツに対し、ライブ配信では視聴者は基本的にじっくり滞在します。ストリーマーと視聴者の間に同期・意思疎通があります。ストリーマーの呼びかけに対して視聴者のリアクションを期待できるため、エンゲージメント率が高いことがライブ配信というメディアの特徴です。

弊研としては、ストリーマーの理想とは「やりたいこと (authenticity) を実現すること」です。ただ今回は、繰り返しになりますが、こうしたストリーマーを活用して広告を打ちたい企業・サポートしたい事務所の方々を想定し、実用的内容を申し上げます。

■ よくある先行事例

企業の方がストリーマーと何か取り組みたいという時、その影響力をどのように評価なさるでしょうか?もしくは単に個人視聴者が、仲間内・社内で自分のご贔屓のストリーマーをアピールしたい時、どのような見方ができるでしょう?

企業の方では:

  • 「チャンネル登録者数」

  • 「Twitter のフォロワー数」

をチェックされる方も多いと思いますが、それは一番欲しい情報ではありません。理由は幾つかあります:

  • 「登録者数」や「フォロワー」とは、過去に著名だったことがある事実の指標であり、今現在の強さの指標ではない。

  • 現在人気が高く同時接続が大きいチャンネルと、今は同時接続が小さいもののより大きな登録者数を持っているチャンネルとで、登録者数だけで比較するのは適切ではない。

  • YouTube の場合1チャンネルに動画とライブ配信が共存する。コンテンツ的に「動画」は人気があるけれども、「ライブ配信」の側面は人気が無いチャンネルもある。

  • YouTube 等のアルゴリズムを重視するサービスは、トレンドに依ってオススメするコンテンツが異なる。すると「過去にアルゴリズム的に強かった(= 人気であった)ものの今は強くないカテゴリ」を発信するチャンネルはフォロワー・登録者が今も大きい。

  • フォロワーの範囲が数百から数万の間のインフルエンサーを探している場合、フォロワーを購入する方法もあるため必ず信頼できるとは言い切れない。

誰かをスポンサーすることで会社の認知度を上げたかったり、インフルエンサーマーケティングで商品を広めたい場合は、過去ではなく、現在に最も影響力があるストリーマーを選ぶ方法が効果的です。
 そのため、ライブ配信の世界では登録者数ではなく、以下のような数値を指標にされる方も多いです:

  • ライブ配信中の最高同時視聴者数

  • 今月のライブ配信の平均同時視聴者数

(右下の赤文字 “430” が「同時視聴者数」 画像出典)

(右下の赤文字 “430” が「同時視聴者数」 画像出典

これら「同時視聴」に関する数値は現在の影響力を表します。弊研の出すデータでも平均同時視聴者数を含めているものも多いです。しかし、それでも不十分であると捉えています。


■ 単位「視聴時間」の強み

ここで、「視聴時間」という単位を考慮しましょう。これは視聴者がライブ配信中に滞在した時間の合計です。

視聴時間という単位は:

  • ファンがツイートをして話題を広めたか

  • ファンに商品をクリックさせたか

  • スポンサーした際にファンが企業名を憶えてくれるか

といったエンゲージメントの指標に最も相関があると捉えています。ライブ配信という双方向性メディアの最も重要な指標です。

例えば日本のストリーマーを esports チーム単位で区切った場合、2020年に国内で最も視聴時間が大きかったチームは DeToNator です。Twitter 社から発表された2020年に「最も会話された」国内チームも DeToNator でした(出典)。
 チャンネル登録者数やフォロワー数で言えば他のチームも挙がるのですが、実際にファンの滞在・行動を測るとこのような結果となります。 

このように視聴時間は、ファンのエンゲージメントまで考慮に入れた場合、最も現在の影響力を表す単位であると解釈しています。
 ライブ配信・ストリーマーの理想とは、好きなことを行って自己実現をし、そこでリアルタイムにファンと双方向コミュニケーションを取り、まさしくコミュニティを構築していくことであると弊研は解釈しています。そのため、エンゲージメントと相関する視聴時間という単位はこの理想に近い指標です。

お断りしますが、あくまで弊研の理念はストリーマーの自己実現・目標達成です。これに優先するものはありません。その上で、ストリーマーの目標達成を最も評価するに近い存在が視聴時間であるという意味です。視聴時間を絶対視するものではありません。

(海外でも視聴時間でチャンネルを評価することが一般的です 画像出典)

(海外でも視聴時間でチャンネルを評価することが一般的です 画像出典

■ 他コンテンツとの差別化

ライブ配信は、他の映像メディアとは毛色が異なります。

新規流入・インプレッションでは Social Media (SNS と呼ばれるもの) や動画・ショートムービーの方が「数字」が大きくなります。「数字」といいますと、あくまで目安ですが:

  • 人気ショートムービー:100万 Like

  • 人気動画:100万回再生

  • 国内最上位ライブ配信:同時接続1万(10万imp)

このようなオーダー感です。ライブ配信に比べて、動画・ショートムービーの方が大きく見えがちです。とにかく大きな数字を社内・スポンサー元に報告したい場合や、未開拓のファンにひたすら目について貰いたい場合は有効です。
 一方のライブ配信は、配信中の時間しか機能しないため、視聴者がいつでも見られる便利なメディアという訳ではありません。再生数やフォロワーがすぐ大きくなるわけではありません。

ライブ配信というものは、実際にそこに居るファンの群衆に、高い確率でクリック・閲覧・購買・行動して貰う点で強いメディアです。単に数値だけ誇示したいのではなく、着実に自社のウェブサイトに誘導したい場合に強さを発揮します。
 リアルタイムに繋がり、密接なコミュニケーションを取ることを強みとしています。

■ 広告価値

ライブ配信の価値を、企業の視点から解釈しましょう。ストリーマーは非常に大きな広告価値が有ります。

スポンサー料の相場は、参考程度ですが:

  • テレビCM:0.1 - 2.5 円/imp

  • インターネットバナー広告:0.1 - 0.5 円/imp

  • インフルエンサーマーケティング:0.2 - 0.5 円/imp 

と言われています。(※impは「インプレッション」の略。いずれも制作費なし、放映権のみ。テレビCMは15秒あたり40 - 100万円を想定。)

これに対し、ライブ配信では動画広告で「3円/imp」程度で算出されます。あくまで相場ですが、ストリーマーは他メディアと比較して高めです。
 これには要因があります。まず、計算がフォロワー単位ではなく、その場に居る人数を基準していることです。確実にそこに居る人間に対して掲示出来るため、信頼でき、高めの価格になっています。
 例えばストリーマー /fps_shaka の1ヶ月あたりの視聴時間は3億分以上です。その配信にロゴを掲載した場合、仮に1分に1回ロゴが映ったとしても、月に3億回そこに確実に滞在しているユーザーの画面に載ることとなります。

ライブ配信はこうした双方向メディアであることを活かした信頼性が魅力となっています。

■ 最後に

現代で視聴時間のスケールを比較すると、「上位チャンネル」の視聴時間は多くの「ゲームタイトル」の合計視聴時間よりもよりも大きくなっています。近年、コンテンツの影響力だけを見れば、このように「チャンネル」の影響力が「ゲームタイトル」よりも大き目である時代に突入しました。

視聴時間という単位は「滞在時間」と同じです。可処分時間というものは現代の大企業(GAFA・ゲーム会社など)がこぞって競っている領域であります。海外、主に英語圏では、視聴時間を基にストリーマーの影響力を測ることが当然となって久しいです。
 弊研は日本市場にてこの視聴時間という単位を基にストリーマーおよびゲームタイトルの影響力を測ることを提言しています。


弊研の願いとしては、日本市場でもライブ配信のインフルエンサーを正しく認識して頂き、本当に真摯なストリーマー・そしてストリーマーの愛するゲームタイトルにも利益が巡ればと考えています。

(完)

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